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「よう言うわ。それを言うんやったら、お前が俺のそばにおる方が不思議でしゃーないわ」
そう皮肉を言って男が振り返ると、そこに女の姿はなかった。
「都合が悪ぅなるとこれや。やっぱり、人選ミスやったかな…」
苦笑いでそう呟き、頬をポリポリとかく。
「ラウル様、私はここにおります。勝手に消さないでください」
男が声のする方へ視線を向けると、そこには先ほどの女がいた。
「そこでなにしてんの」
「資料を…御持ち致しました」
水晶玉へ寄る女は一つ、白いファイルを胸に抱えていた。
「え?そんなん要らんよ?俺、もう決めとるし」
真顔でそう言って、男は水晶玉から離れる。
「そうなのですか?一体…何方(どなた)なのです?」
「マイナ・ルーメイ。ヤツしかおらんやろ」
笑ってそう言う男に、女は持っていたファイルを黙って差し出す。
「要らんて。もう決めてるし」
男がそれを拒むと、女はファイルを開く。
「その、マイナ・ルーメイの資料でごさいます」
「えらく準備がええなぁ。てか、なんでマイナやと分かったん?」
「マイナ・ルーメイ…貴方がどうしても、許すことの出来ない女。そうでごさいましょう?」
女がそう答えると、男は鼻で小さく笑い、どこか観念したように、
「よう覚えてんなぁ…」
そう呟き、悔しげに笑う。
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