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やがて日は落ち夜となる。
月の明かりを頼りに、外を歩く。
いつにもまして、体が冷える。
これは長居できない。
縁側から部屋に戻ろうと、
立ち上がるために、
体に力を込める。それと同時に、
頬に熱が走る。熱と言っても、
火のように、熱くはなく暖かい。
お茶の入った、湯飲みのような感じ。
「飲む?」
霊夢が2つの湯飲みを持ち、
側に立っていた。
熱の正体は、霊夢が
俺の頬に、湯飲みを当てたのだ、と
容易に想像できた。
「ああ」
俺は、霊夢から
湯飲みを一つ受け取り、
口へと運ぶ。
口には、ほどよい甘味と苦味。
少しずつ、味わって飲んでいく。
「寒い」
「そうね」
会話の際に、
吐息が白く見える。
どうやら、相当寒いらしい。
「綺麗ね」
「そうだな」
空を見上げ、言葉を交わす。
会話は、長く続かないが、
案外、楽しいものだ。
俺は、そっと立ち上がり、
側にあった木に登る。
「落ちないでよね」
「落ちるかよ」
木の上だから、といって
急激に星がよく見えるように、
なるわけではないが、
それでも縁側から、
座っているよりはよく見えた。
「今宵は冷えるわね」
「だな」
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