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花は好きかと問われ、好きと答えた君だけに聞くとしよう。なら、君は花を愛しているか?この問いに君はどう答える?
答えに躊躇えば、それが答えだ。君は花を愛してはいない。だが、それでいい。
君が花を愛していると躊躇無く答えれば、僕は嫉妬のあまり気が狂ってしまい、君に殺意を抱き殺してしまうだろう。
だが、花を愛するといっても実際に愛する人はいない。愛でて、愛撫し、接吻に至るまでの課程。明らかに、人に対する情の全てを、花という存在一点に向ける。
確かに花は美しい。可憐でしかも高貴であり、脆く弱い。ピグマリオンは石像を愛し、結果、女神の慈愛により確かな愛を得とくした。ならどうだろう。花がもし人の姿を象るなら、それは何者にも勝る美しさに違いない。そう。花は確かに僕の目の前でありのままの燦然な姿を見せつけ、魅了し、虜にする。
花は女性でもあり男性でもある。貴族でもあり貧民でもある。長寿でもあり短命でもある。僕はその矛盾した裏表にとにかく惹かれるわけだが、何せ相手は花である。あれがどれだけ恥ずかしがり屋で、愛らしいことか。
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