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だが、ピグマリオン―――上演の為には、彼女を演劇部へ入れ、そしてヒロイン役とも言える石像に飛び級としてなって貰うしかない。
はたして、彼女にそれが出来るかどうかだが。声はか細く、名の様にすぐに枯れ散ってしまいそうな彼女が、人前で演技しようなどと決心に至るのか。
考えれば考える程、不可能の文字が過ぎる。だが、その考えも、僕の想像力で一掃された。話の内容を変えようと思いたったのだ。それは、ピグマリオンはそのままに、石像では無く花にしてしまおうと。花が人になるまでは、彼女を一切舞台に出さず、最後の最後で彼女を出そう。そうすれば、彼女の出番も非常に少なく、台詞を最小限に抑える事が出来る。僕はそれを思い立つと、授業等聞かず脚本作りに没頭した。そんな僕の姿を、彼女が視線を送っているものとは知らずに。
脚本は完成せずに、放課後になった。
僕が襟梨楓に気付いたのは、その時が初めてだった。襟梨楓は僕に何の前触れも無く話し掛けてきた。これは僕からしても嬉しさはあったが、同時に警戒心を持たせた。
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