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朝…
多くの生徒が思い思いに登校する中、1人だけ俯いて登校する女生徒がいた。
静玖である。
(昨日のあれ、一体何だったのかな……?)
脳裏から離れないのは、昨夜みた生徒会長の事だった。
何故、陰惨な殺人事件が起きた場所で1人でいたのか?それも、初めて見た時とはかけ離れた鬼のような形相で……
(まさか見間違い…って事は無いよね?でも『幽霊の正体見たり枯れ尾花』って言うし……ん~~~~)
何もかも、静玖の頭では説明がつかなかった。
「やっほー静玖ぅ♪」
「お早う、今日は早いんだな」
程無くして後ろから綾子と小春が追い付いて来るが、静玖のしかめ面が晴れる事は無かった。
「おや、君は昨日の……そんなしかめ面でどうしたのですか?」
俯いて歩いていた静玖。その意識を浮上させたのは、唐突に掛けられた声だった。
(ぇ?)
その声の主を見た瞬間、静玖の意識は停止してしまった。
「って、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔して……大丈夫ですか?」
目の前にいたのは、昨日の生徒会長…誰あろう、平井 清治その人だった。
「あっ…!!いやあのその、何でもないんです!!ホントに大したことありませんですって!!!!」
今しがた脳裏に浮かんでいた人物が、リアルに目の前にいる。それは、ただでさえ内気な静玖を動揺させるのに十分過ぎた。
「はっはっはっ、そんなにテンパらなくても獲って食ったりはしませんよ。まずは落ち着きましょうか?」
上級生らしい大人びた微笑を浮かべ、清治は静玖の前髪を軽く撫でた。
「はっ、はい……!!あ、あの平井先輩!!」
あまりの出来事に、興奮気味だった意識が飛びそうになる。それを辛うじて制しながら、静玖は意を決して口を開いていた。
「あの、先輩は昨夜、公園にいまし――――」
「静玖~~~って、あれ?平井先輩も!?」
だが……せっかく言いかけた言葉は、横合いから駆け付けた小春の呼びかけに遮られてしまっていた。
「あっ、小春ちゃん…な、何でもないです!失礼致しましたぁ!!」
大慌てで彼に頭を下げ、静玖は小春と一緒に逃げるように駆け出して行った。
静玖は、気付く事は無かった……
彼女の言葉を聞いた瞬間、清治の表情が豹変したことを……
それは昨夜偶然目にした、あの鬼のような鋭い表情であった事など、気付く筈も無かった……
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