第壱の巻「紅き刃の死神」

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夕陽のとっぷり暮れた帰路を、静玖は駆け足で下校していた。 (やっぱり綾子ちゃん達に手伝って貰えば良かった~~~~~) 昨日から残っていた整理の手伝い。それが終わったのは、下校時刻の直前だった。 幸い、学校に閉じ込められはしなかったが、昨日より遅くなってしまった分、急いで帰らないといけない。 (うぅ、これじゃ晩御飯に間に合わないよ。お母さん仕事だし、お姉ちゃんも待ってるのに……) 橘家は、所謂シングルマザーの家族構成である。 母は出版社の仕事で遅くまで帰って来れず、高等部に所属する姉の紗枝菜(さえな)はズボラで家事手伝いが出来ない。今の台所事情は実質上、静玖に一任されている様なものだ。 ただでさえ食いしん坊な姉の事、早く帰って夕食の支度をしないと後が怖くなる。 「公園を抜ければ近道だけど、でも今は通りたくないし……」 児童公園を突っ切れば、普段迂回してる分かなりの短縮になる。だけど、あそこは今、警察に封鎖されている。 そうでなくても夜は不気味で、1つしかない街灯も明るさどころか不気味さを醸し出すのに一役買っている。 こんな状況でなかったら、全力で避けて通りたい。 (だけど返らなかったらお姉ちゃんが……) しかし、このまま遅れれば姉が冷蔵庫の中身を無造作に食い荒らしかねない。せっかく作った漬物や炊いて保存してあるご飯も、あの姉ならお構いなしだ。 (……ちょっとだけ、怖いけどちょっとだけならいいよね?) 結局、静玖が選択するのに時間はかからなかった。 『KEEP OUT』と書かれたテープを掻い潜り、公園の敷地に侵入する。 ここは多少広いが、向かいの道路まで50m程しか離れていない。だが、街灯が1つしかないため夜にここを通ると非常に気味が悪い。 昨日より時間が遅い分、殊更不気味さを感じさせる景色を通り過ぎ、静玖は足早に駆け抜けようとした。 ガッ!! 「もご!?」 後ろから何かに口を塞がれるまで………
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