第壱の巻「紅き刃の死神」

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「おーーい静玖ぅ~~~~~~、ご飯まだ~~~~???」 1人しかいない部屋の中に、気怠そうな声が気響く。 鹿ケ谷学園の制服を脱ぐこともせず、少女はぼんやりした顔で頭をボリボリと掻いていた。 「…って、あの子まだ帰ってないか。しゃーない、小春か綾子でも呼ぼうかね?」 欠伸を噛み殺しながら立ち上がると、少女は徐に携帯電話を取った。 「って、電池切れてんじゃない。肝心な時に使えないなぁ」 …が、すぐにしかめ面で電話を放り出していた。 「それにしても、うちの可愛い妹ちゃんはどこで何してるのかしら………???」 いつになく帰りの遅い妹の事を考えながら、橘 紗枝菜(たちばな さえな)は夜の帳に覆われた外を眺めていた。 その頃――― (な!なななななぁ~~~~!?) 突然の清治の行動に、静玖の心臓ははち切れんばかりに鼓動していた。 「…来る!」 途端に、清治が鋭い声を上げた。 静玖が暗闇の中の何かに気付いたのは、ちょうどその時だった。 それは、暗がりの茂みの中からまるで染み出す様に現れた。 腐った血の匂いと不気味な唸り声、その不快な感覚が鼻腔に、耳に浸透していく……… 「僕の傍から離れないで下さい。絶対に……」 清治は状況の飲み込めない静玖の頭をポンと押すと、ゆっくりと立ち上がった。 闇の中から現れたのは、四つん這いで迫りつつある異様な存在だった。 犬に酷似した四肢と爪、鼻面を持っているが、毛は見当たらない。しかもその頭は犬の様だったが、顔は寧ろ人間のそれに近かった。 こんな生命体など見た事が無い。だが、それは確実に静玖と清治を睨んでいた。 さながら舌なめずりをするかの様に……… (な…何なの、この生き物!?こんなの見た事ないよ――――) その背後から、ガサリと音がする。程無くして、先程の怪物の後ろから同じ姿をしたモノが這い出してきた。 「2体か……出てきたな」 そんな中、清治はこの場に似つかわしくない不敵な笑みを浮かべていた。 「せっ…先輩……」
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