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「おーーい静玖ぅ~~~~~~、ご飯まだ~~~~???」
1人しかいない部屋の中に、気怠そうな声が気響く。
鹿ケ谷学園の制服を脱ぐこともせず、少女はぼんやりした顔で頭をボリボリと掻いていた。
「…って、あの子まだ帰ってないか。しゃーない、小春か綾子でも呼ぼうかね?」
欠伸を噛み殺しながら立ち上がると、少女は徐に携帯電話を取った。
「って、電池切れてんじゃない。肝心な時に使えないなぁ」
…が、すぐにしかめ面で電話を放り出していた。
「それにしても、うちの可愛い妹ちゃんはどこで何してるのかしら………???」
いつになく帰りの遅い妹の事を考えながら、橘 紗枝菜(たちばな さえな)は夜の帳に覆われた外を眺めていた。
その頃―――
(な!なななななぁ~~~~!?)
突然の清治の行動に、静玖の心臓ははち切れんばかりに鼓動していた。
「…来る!」
途端に、清治が鋭い声を上げた。
静玖が暗闇の中の何かに気付いたのは、ちょうどその時だった。
それは、暗がりの茂みの中からまるで染み出す様に現れた。
腐った血の匂いと不気味な唸り声、その不快な感覚が鼻腔に、耳に浸透していく………
「僕の傍から離れないで下さい。絶対に……」
清治は状況の飲み込めない静玖の頭をポンと押すと、ゆっくりと立ち上がった。
闇の中から現れたのは、四つん這いで迫りつつある異様な存在だった。
犬に酷似した四肢と爪、鼻面を持っているが、毛は見当たらない。しかもその頭は犬の様だったが、顔は寧ろ人間のそれに近かった。
こんな生命体など見た事が無い。だが、それは確実に静玖と清治を睨んでいた。
さながら舌なめずりをするかの様に………
(な…何なの、この生き物!?こんなの見た事ないよ――――)
その背後から、ガサリと音がする。程無くして、先程の怪物の後ろから同じ姿をしたモノが這い出してきた。
「2体か……出てきたな」
そんな中、清治はこの場に似つかわしくない不敵な笑みを浮かべていた。
「せっ…先輩……」
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