第壱の巻「紅き刃の死神」

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「あ、あれは一体何なんですか……?」 ボソボソとか細い声で、静玖は清治に問い掛けてみる。 「そうですね……強いてあげるなら、あれが『猟奇獣』の正体ですよ」 一方、清治は落ち着き払った様子でそう答えてしまっていた。 「昨夜はそれを調べてたんですが……どうやら、君の美味そうな匂いに誘われて出てきたみたいですね」 清治は、ゆっくりと立ち上がると呟いた。 「そんな……先輩、逃げましょう!」 恐怖で金切り声になってしまっていたが、静玖はそんな事はお構いなしに清治に向かって叫んでいた。 「多分、闇雲に逃げても追いつかれて終わりですね……体格を見ても、人間より遅いという事は無いでしょうから」 清治の方は、声色1つ変えずに怪物を凝視している。 「………こうなった以上、潰すしかありませんね」 そして……不意に、彼はそう呟いていた。 そのままゆっくりと立ち上がる。 「せ…先輩?」 突然立ち上がった清治に、怪物は一層唸り声を強める。それを意に介すことも無く、彼は件の敵を凝視する。同時に、徐に懐から何かを取り出した。 「それ、お札……?」 彼が手にしていたのは、陰陽師や霊能力者が使うような紙切れ……通称、『お札』と呼ばれるようなものだった。 「正確には『護符』ですが……まぁいいでしょう。今から少し暴れますよ」 静玖の発言をまたも受け流した清治は、取り出した護符を左手に持って軽く振った。 瞬間――― その護符が、突然紅く光ったのだ。 清治が左手に持った護符は、光を発しながら形状を変化させていく。 細長くなり、先端が鋭く変化していくその形はまるで……… 「それ…槍………ですか?」 光が収まった時、彼の手には大きな槍が握られていた。 「我が宝具『雷神』、目標を殲滅する……!!」
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