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紅い煌めきを放つ槍を携えた清治。それに向かって、怪物の1体が弾かれたように襲い掛かってくる。
巨体に似合わぬ素早い動きは目で追う事は出来ない。瞬く間に清治の懐に飛び込んでしまう。
が…………
ザシュッ!!!
途端に、鋭い音がした。
今しがた襲いかかろうとした怪物は、そのままの格好で立ち尽くしていた。だが、伸ばした腕の先がなくなっていた。
一方、清治の左手は槍を振り上げたままの姿で止まっている。しかし、表情に一点の揺るぎも見えなかった。
「まず…1つ!」
そのまま素早く柄を回転させたと思うと、槍の穂先は怪物の頭を叩き割ってしまっていた。
静玖は、目の前で繰り広げられている光景が信じられなかった。
今まで傍にいた人が、常識では考えられない不可思議な力を以て異形の怪物を狩る。
一瞬、夢かと思ったが……これは紛れもない現実だ。
だが、先刻からの恐怖はいつの間にか気にならなくなっていた。
怪物の1体を一瞬にして葬った清治……夜闇に煌めく赤銅色の煌めきが、どこか優美に見えていた事もあるが………
だが何より、頼もしさの方が強かった。
この人は負けはしない………!!そんな確信が自分の胸にあった。
「ジャ!!!」
途端に、乾いた布を擦る様な音がした。同時に、何かが近づいてくる気配が静玖の全身に突き刺さる。
反射的にその方向を見た時、視界に入ったのは……
もう1体の怪物が、静玖の方に弾かれて向かって来るところだった。
「この学園の生徒に手は出させません―――平家の名において」
だが……怪物の爪がその身に触れようとした瞬間、
斬!!!
静かな言葉が耳を震わせたと思うと、振り下ろされた赤銅色の槍が怪物を切り刻んでいた。
紫電一閃
まさしくそう呼ぶほどに鮮やかで、そして静かで軽やかな斬撃であった。
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