第壱の巻「紅き刃の死神」

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切り刻まれ、骸と化した怪物は、悪臭を放ちながら地面に落ちる。その残骸はどろどろした粘液状の塊となって崩れ落ちていった。 それを見下ろすのは、赤銅色の槍を構えた清治。彼の双眸は、昨夜静玖が見た時以上に鋭く、冷たい煌めきを放っていた。 「あれ?君は逃げないのですか?」 目の前で繰り広げられた光景。それを見ていた静玖に清治が声を掛けたのは、ドロドロの残骸が消えてなくなってしまった後だった。 「一応、逃げ出す時間をあげたつもりだったが……なるほど、腰が抜けてしまっていたんですね?」 無理もない。目の前で起こった光景があまりに非現実過ぎて、とうとう尻餅をついてしまったのだった。 いや、失禁しなかっただけ、まだマシな方だったかもしれない。 それ程までに静玖を襲った出来事は衝撃的だったのだ。 「全く、仕方ない…立てますか?」 清治はふっと溜息を尽いて呟くと、静玖に手を差し出した。 「せ、先輩…大丈夫、立てますです……」 未だ呂律の回らない口調で返すと、静玖は地面に手をついて尻を浮かそうとした。 「無理しないで下さい。それと、さっきから水玉模様が見えてますよ」 途端に…件の生徒会長は、さらりと彼女が凍りつくような発言を言ってしまっていた。 「ふひぇ!?ひゃぁ~~~~~~!!!!」 数秒後、真っ赤な顔でスカートを押さえる少女の悲鳴が響き渡った。 「さて…もう気配は感じないですね?それじゃ僕はこれで帰りますが、気を付けてお帰りなさい」 公園を出て暫くの間、清治は静玖についてきていた。 そして別れ際になって、彼は静玖に朗らかな笑みを返しながら言った。 「もぅ…もう最悪です。よりによって先輩に見られちゃうなんて、もう生きてけないですよぅ……」 しかし静玖は、先刻のハプニングが未だ引き摺っているらしい。真っ赤な顔で清治を睨んでいた。 「何をそんなに恥ずかしがるんです?たかだかスカートの中が見えただけでしょう?」 そんな静玖をよそに、清治はシレッとした口調で言ってのける。 「そんなさらっと言わないで下さいよぅ!!わ、私、男の人に見られたの初めてなんですから~~~~」 「ふむ……今の君にどう返していいのか、これは少々難解ですね……」
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