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‐ん…?‐
心地良い風を感じつつ、少年は目を覚ました。
‐ここは…どこだ……?‐
回りに見えるのは、砂浜と海と…そして、今まで見たことの無い沢山の物だった。
白い線が引かれた平坦な道。
その向こうに立ち並ぶ巨人の様な建造物。
そして、馬よりも遥かに早い何かが、時折道を通り過ぎていく…
明らかに、それは自分の今までいた世界では無かった。
‐ここは…まさか、ここが海の下の都…?‐
周囲を見渡すが、そこには少年以外に誰もいなかった。
皆、自分と同じ様に海に飛び込んだ筈…なのに、そこにいたのは自分だけ……
「成功したか…」
暗い帳の中、微かな声がする。
「その様だね。君達の大事な帝が、蘇ったよ」
控えていた2つ目の影が、クスリと笑いながらそう呟いた。
「清盛公の血を引く最後の者が…いいだろう、見届けてやるさ」
「そうですね……彼等の動向も気になりますが、今はこれで良いでしょうか………」
3つ目の人影も、どこか憂うような口調で呟いた。
「さぁ、平家物語の再開だ――――」
時を駆けた幼き帝は、新たなる世界に放り込まれる。
それは運命か、さもなくば偶然の神の企てた児戯なのか………?
それを知る術は未だ開かれない。だが、誰も知らぬ何処かで運命は確実に流転を始めていた………
千年もの時を超え、平家物語は今再び解き放たれていく―――――
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