第壱の巻「紅き刃の死神」

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「ぅ、わああーーーーー!!!!」 絹を割く様な悲鳴を上げて、だらしない風貌の若者達は目の前に迫る『何か』を見ていた。 何故!? そう思いたくなるほどに、彼等は状況整理が追い付いていなかった。 自分達はただ、いつもみたいに屯して喋ってただけだというのに…… だが、今の彼等には平穏など無意味だった。 その何かは、突然暗闇から染み出す様にゆっくりと姿を現した。そして、呆気にとられている男たちに音もなく近づいて……そして、手近にいた1人にいきなり喰らい付き、引き千切ったのだ………! 鮮血が顔に飛び散った時、残る連中はようやく理解できた。 このままだと殺される………と…… 否、それ以前に突然現れた何かが仲間の1人を目の前で捕まえ………そして生きたまま貪り食ったのだ。 その正体不明の存在が、首が半分折れた人間を…つい今まで生きてた筈の人間を無造作に即死させ、その屍肉を惨たらしく食い散らかす………正気を失うのに、これほどの光景は無かった。 次の瞬間、ある者は我先に、ある者は他の男を乱暴に押し退けてそれぞれ逃げ出そうとした。 だが、時は既に遅かった。 先頭を走っていた男の目前に、公園の入り口が見えてくる。 (た、助かった!あそこのバイクに乗れば逃げられる!!) 公園の入り口にはバイクを停めている。あれに乗れば逃げられる筈……… 「は、は、は……ざまぁ見ろ!俺は生き延びた!助かったん―――――」 グジャッ!!! 自分の頭が無花果の様に爆ぜるまで、彼は自分が殺された事にすら気づく事は出来なかった。 4月15日朝刊 『猟奇獣、再び』 4月14日早朝、東京都内福原町の公園で男性数名の他殺体が発見された。 遺体は何らかの巨大な動物に襲われたかのように損壊が激しく、肉片が周囲に散乱するなど凄惨な様相であった。また、いずれも脳、臓器、眼球など特定の部分が見つかっておらず、身元の特定は困難を極めると思われる。 尚、現場の状況から被害者は昨夜から未明のうちに公園で死亡したものと判断される。 遺体に刻まれた傷跡は動物の噛み傷に酷似しており、先日同区域で発生した『猟奇獣』事件との関連性も指摘される。 犯人の手掛かりは一切不明。
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