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「はぁ、あんなにかかるとは……これじゃテレビ間に合わないよぅ………」
夕暮れの帰り道、静玖は1人トボトボと下校していた。
(綾子ちゃんも小春ちゃんも先に帰っちゃうし、1人であれやるなんて無理~~~)
今日は学年主任の先生に用事を頼まれ、学校からの呼びかけプリント作成を手伝わされる事になった。そのうえ数百枚単位で印刷するため、それを取り纏めるのに非常に時間がかかってしまった。
続きはまた明日……ということで解放はされたが、静玖にはあれをやりきる自信は萎え始めてきていた。
「あぅ、こんなんだったら安請け合いでクラス委員なんかするんじゃなかった……」
我ながら頼りにならないクラス委員だ。というか、聞こえはいいが実際はクラスの面倒事ばかり押し付けられる、ほとんど貧乏籤に近いのでは……?
そんな事を思いながら、静玖はトボトボと帰路を歩いていた。
暫く歩くと、薄暗い中にぼんやりと黄色い物体が見えてくる。
一瞬立て看板の様に見えたが、よく見るとそれは……備え付けのポールに幾重にも張り巡らされた「KEEP OUT」のテープだった。
いつの間にか、公園の前まで来てしまったのである。
(ここって確か…綾子ちゃんが言ってた猟奇獣の殺人現場だよね!?)
昼間に親友が言っていた事を思い出し、静玖は思わず身震いした。
(うぅ、何か怖いかも……早く帰ろう)
言い知れぬ悪寒を感じた静玖は、とっさに踵を返して駆け出そうとした。
「……?」
その瞬間―――視界に何かが映った。
暗がりの中で、誰かがしゃがんでいる。その人影の前には、周囲と違ってどす黒く染まった地表と描かれた白いラインが見える。
その人影は地面をジッと見つめていて、静玖には気付いていない。
だが、静玖が本当に驚いたのはそんなものではなかった。
チカチカと点いた街灯に照らされたのは、静玖の記憶に新しい男の顔だった。
(あ、あれって……あれって、まさか……平井先輩!?生徒会長……だよね?)
そこにいたのは、先日静玖と鉢合わせした生徒会長…平井 清治その人だった。
あの時とはかけ離れた鋭い表情であったが、見間違える筈もない。
(な、何で、生徒会長が……どうしてあの人がこんな所にいるの?)
いくら考えても結論は見つからない。だけど、ここにいたくないという気持ちが何より強かった。
静玖は音を立てないように気を付けて踵を返すと、そのまま足早に去っていった。
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