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時計の短針が深夜十二時を超えようとした頃、リーマスの父親が手元に持っていた葉巻を全て吸い終わったことに気付いた頃、リーマスがもう何度めになるかも分からない往復を始めようとした頃……、
――激しい震動と共に轟音が鳴り響いた。
「なっ、何だ!?」
リーマスが身体をよろめかせながら叫んだ。あまりの爆音に心臓がまだ強く波打っている。父親の方を見れば、同じように目を見開いて辺りをきょろきょろとしていた。
雷が落ちたことは分かる。だがどこに? かなり近いはずだ。
妻が心配だ、そう思ったリーマスは部屋を出ようとするが、それよりも先に誰かが部屋の扉を開いた。
「旦那様!」
入ってきたのは紺色を基調とした制服を身に纏った若いメイドであった。息を切らせ、茶色い瞳は大きく見開かれている。
リーマスはそのメイドに走り寄ると、その両肩をがしっと掴んだ。
「おいっ、雷はどこに落ちた!? マリアは、私の子供は無事か!?」
メイドは一瞬「ひぃっ」と声を漏らし、
「雷が落ちたのは……せ、西館です。落雷で火事になってしまい、今屋敷の者が消火にあたっています。お、奥さまの無事は……か、確認できておりません」
メイドが声を震わせながら答えると、リーマスは舌打ちをして西館の方へと走りだした。
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