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結局、長引いてはデーモニッシュに気付かれる恐れもあるので、ジェイルの分け前は三割五分で落ち着くことになった。
「――で、お前はどうすんのよ。あいつらを助けに行くのか?」
荷物を抱えた闇ギルド員たちを従えてマルコは尋ねるが、ジェイルはちいさくかぶりを振る。
「いーや。俺が行っても役には立たねえだろ。俺はこのままずらかるぜ」
そうか、とマルコは相槌をして、
「ならよ、俺たちと一緒に来るか? 昔の馴染みだ、今までの事は水に流してやるぜ」
そんなマルコの提案には、ジェイルは目を細める。
「折角のお誘いだが、遠慮しておくぜ。お前らといたら命がいくつあっても足りやしねえ。俺は地元じゃ死んだことになってるから、しばらくこの立場を利用して遊び回るぜ」
「そうか、分かった」とマルコは名残惜しそうな顔は一つも見せずに言った。
「じゃあこれでオサラバだな。もう二度と会うことはないだろう」
「ケッ、こっちから願い下げだぜ」
そんなことを言うジェイルとマルコは互いにニッと笑みを溢して、そしてマルコたちは早々に去っていった。
「さて、俺も見つかる前にずらかるとするかね」
その部屋の金目のものが全てなくなっていることに気付かれたのは、それから間もなくしてからだった。
つまり、終わりだ。
全ての手札を失ったペゼーは、もはや抵抗する気力もないのかぐったりとうな垂れていた。
リーマスがその隙にペゼーを捕まえようとして、服の裾を掴まれてその足は止まった。掴んでいたのは自分の妻で、見つめる瞳は見逃してあげて欲しいと訴えているようだった。
先ほど入ってきた男が急いでペゼーを引きずっていくのを見届けて、講堂からデーモニッシュたちの姿が消えた。
「ごめんなさい。あんな人でも、私の叔母なの……」
リーマスは何も言わない。俯くマリアは少しだけ肩を震わせた後、顔を見上げてリーマスに微笑んだ。その目には若干の涙が浮かんでいた。
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