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「クレアは、あまり元気そうじゃないね。ギルドマスターってやっぱり大変?」
クレアを気遣いながらライトはおずおずと言うが、クレアは乾いた笑い声を響かせて、そしていつものように笑って見せた。
「まぁ、そのうち慣れるわよ。最初だからやる事が多いだけで、すぐに楽になるわ。おじいちゃんも手伝ってくれてるし」
クレアの視線につられて、ライト達も書斎机の横に腰掛けている元ギルドマスターへと顔を向けた。
ストラドはあれから間もなく退院をし、今はギルドでのんびりとした日々を過ごしている。膝の上に本を置いて、ストラドは子供たちに向けて小さく手を振った。
「そういえば、ライザーは?」
カイがキョロキョロと周囲を見回した後、いつものメンバーの一人がいない事に気付く。
「あの人なら、今は仕事で出ているわ。私はもう魔物退治には行けないから、私の分まで頑張ってもらわなくちゃね」
ライザーがいないことに落胆し、カイは残念そうに肩を落とす。とはいえ年越しにまでは帰ってくるだろうし、すぐに会えるだろう。
仕方ないかと結論づけたところで、背後のドアがノックされた。顔を出したのはキャサリンだ。
「クレア、お客様よ」
早速ギルドマスターの仕事かなとライトは思ったが、そのお客はキャサリンの脇をすり抜けてライトに飛び付いた。
「お兄ちゃん!」
後ろで結ばれた赤髪が尾を引いて、レイシアは兄に抱き付いた。
「レイシア!? どうしてここに!?」
その問いに答えたのは、二人目の客だ。
「――遊びに来た、では不満かしら?」
レイシアとは対照的ゆっくりとした動作で部屋に入ってきたのはマリアだ。相変わらず肩に赤い鳥を乗せている。
「マリアも来たんだ。よくあのお父さんが許したね」
最後に会ったのはストラドが入院していたあの病院でのことだが、あの時の印象ではマリアの外出など決して許されそうではなかったが。
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