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マリアはふふっと笑いを溢すと、打算的な笑みを浮かべる。
「ええ、“運良く”おばあさまが一緒にいてくださったので」
マリアの父、クラウス氏は話を聞く限り婿養子であるらしく、どうにも義母に弱いらしい。そんなマリアの一言には、隣にいるカイとニーナまでもが笑いを溢してしまう。
ただ、“運良く”という言葉にはライトは苦笑いだ。学校を出る時に学園長とマリアが話している所を見かけて、その時に「是非家においで下さい」とマリアが言っていたのをライトははっきりと聞いた。全て計算通りというわけだ。
学園長と言えば、レイシアの救出後にこんなやり取りがあった。
『――フェルマータ家に戻らないのですか?』
学園長室に呼び出されたライトはその言葉に強く頷いた。学園長に呼ばれたということで周りのクラスメイトたちは何をやったんだと大騒ぎであったが、実際は紅茶を飲みながら和やかな会話だった。
『僕はガリムの魔法学校に行っていることになっているし、ここで戻るのはちょっと問題でしょう? だから学校にいる間はライト・ジャストとして過ごして、卒業してから戻るつもりです』
その言葉にアマンダ女史は眉をひそめる。
『でも、それは周りが勝手に決めたこと。あなたには家に戻る権利があるのですよ』
ライトは思わずクスリと笑った。
『父にも同じことを言われました。悪いのは自分だから、罪を償うのは当然のことだと。でも、これは僕が自分で決めたんです。それに、二度と家には戻れないと思っていたから、僕はそれでも幸せなんです』
そんな健気な言葉に、アマンダ女史は慈しむように微笑んだのだった。
そういう訳で学校ではあまり甘えられない事情があるせいか、レイシアは学校とは打って変わってべったりしている。ライトはやれやれとレイシアの頭を撫でていると、ふとある事に気付いた。
「ん? お客さんって、レイシアとマリアのこと?」
お客はクレアに用事があるように思ったので、てっきり仕事の話だと思ったのだが……。
そんなライトの疑問に、レイシアはえへへと笑って、兄に抱き付いたまま後ろを振り返った。
ドアの向こう側にキャサリンが引っ込み、次いで本当の客が現れた。レイシアと同じ色の髪をした男だ。
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