最終話 乾杯

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 その来客が来るや、ライトとクレアは目を丸くした。 「や、やぁ。ライト。元気にしてるかい?」 「父さん! それに、母さんまで!」  少々ぎこちない笑顔になっているリーマスの後ろから母マリアも書斎に入ってきて、ここにきてフェルマータ家が勢揃いすることになった。  当然、この部屋の主はあんぐりと口を開けている。 「リ、リーマスさん? 一体、どういったご用で?」 「いや、なに。今日は仕事の依頼をしに来たんだが、今は大丈夫かな?」 「仕事、ですか? でもフェルマータではマルクに本部があるギルド《トパーズ》とか、公務ギルドを利用しているのでは? デーモニッシュの件も終わったし、何を改まって……」 「いや、なに。たまにはね、その、いいじゃないか。いろんなギルドと関わりを持つのも大事だと思ったんだよ」  あははと笑うリーマスに対して、クレアはやれやれと苦笑いだ。目的は間違いなくライトに会いに来たということだろう。  クレアは少しだけ考えて、そしてギルドマスター然とした自然体で答えた。 「申し訳ありませんが、この部屋が今この有り様なので……ライト、準備が出来るまで代わりにお客様のお相手をお願いしてもいいかしら」  部屋が様子など関係ない、ただ親子の時間を作るためにでた方便だ。実際リーマスの様子から仕事の内容など大したことはないということは窺い知れる。  ライトはクレアの気遣いを汲み取ってうんと頷くと、父親に駆け寄りその手を引いた。 「父さん、こっち。ギルドの案内をするよ」  ライトに続いてレイシアが父親の反対の方の手を掴む。 「パパ、ここのシェフってすごく料理が美味しいのよ。それにみんな楽しい人ばかりだし」 「あっ、こらこら二人とも」  二人の子供に手を引かれて、リーマスは引きずられるように部屋を出ていった。その様子を見れば誰が数カ月前まで軋轢(あつれき)のあった家族だと疑えるだろう。  カイとニーナ、そしてマリアは互いを見合わせて肩をすくめると、笑いながらライトたちの後を追いかけた。
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