STORY④ 宿泊訓練

11/18
前へ
/87ページ
次へ
素直に雫に話した。 波で舟が揺れる。 波は何もなかったかのように舟を揺らしている。 俺達も舟と一緒に揺れていた。   しばらく沈黙が続いた… 話を全て聞き終わった雫は抜け殻のように硬直している。 ショックが大きすぎたみたいだ。 だが次の瞬間目を疑った。 雫の目からは涙が溢れでていた… なんで?なんで泣いてるの⁉ 自分には何がなんだか分からなかった… すると雫は俺の震える手を力いっぱい握ってきた。 雫:「怖くたって私が傍にいるからね…ずっと手握ってるから。ずっとずっと毅が安心するまで握ってるから…」 雫の手は小さいがその時は大きく見えた。 雫の手は温かく恐怖心を取り払ってくれる。 毅:「不思議だよ……雫に手を握られてると安心するよ」 ためらいもなく自分の素直な気持ちだった。 雫がいれば怖くない。 今までは誰1人として人を信じてこなかった… 裏切られるのが怖かった… だから1人でずっといた… だけど今は違う。 雫は違う… 雫はおびえてた俺を救ってくれた。 手を握る事で不安がなくなった。 こんな経験をしたのは初めてであった。 この時俺は初めて『心のそこから人を信じる』ことができたのかもしれない…
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加