47人が本棚に入れています
本棚に追加
魔物が叫ぶと同時にその背中から先程の触手が2本伸びた。
新鮮な肉を喰らわんと男に襲いかかる。
相対する男は腰の剣の柄に手をかける。
次の瞬間、迫りくる触手は2本とも男まで届かず弾かれていた。
「イてぇな! 軍のヤローか?」
「おしいな。“元”軍人だ」
男は微笑を浮かべた。
「“元”かよ。まぁ、残念だけどその剣じゃオレの体は切れねえみてえだなぁ……それにこれ以上喋ってる時間はねぇんだよ。腹が減ってきてよぉ……」
再び触手が鎌首をもたげ、男に狙いを定める。
「死ねぇ!!」
2本の触手が男に向かっていく。
「剣では切れんか……」
そう言って剣を地面に突き刺す。あまりに無防備な男に触手が迫る。
しかし、男の口元は微かに笑っているようにも見えた。
突如、男の足元から赤黒い帯のようなものが出現した。その血のような色をした帯は男の身体を這うように包んでいく!
身体が全て赤黒く染まった時、人間としての姿はそこには無かった。
全身を覆う漆黒の体毛、発達した四肢とどす黒く光る爪。
銀色のたてがみに、狼を思わせるその容貌は凄まじい覇気を帯びている。
“人狼”のようなその姿はまさに、“魔物”だ。
最初のコメントを投稿しよう!