第1話 内なる魔

4/4
前へ
/125ページ
次へ
触手が身体に食いつく寸前、魔物と化した男は両腕でその触手を掴み勢いを殺した。 「なっ!?……何だよそれは……」 触手を掴んだ手に力を込める。 「ウオオオオオォ!!」 触手に突き刺さった爪は肉を裂き、触手を引き千切った。 千切れた触手から血しぶきがほとばしる。 「ぐっ……! 化けもんが……!」 男の鋭い眼光は魔物を捉えている。 「ふはは!! そんなもんはいくらでも生えてくんだよ!! コアが破壊されねぇ限りは……」 「The right answer,a foolish sinner.... “そのとおりだ、愚かな咎人よ…”」 魔物が喋り終わる前に、男は背後の頭上に回り込んでいた。 並みの瞬発力ではない。 「な!?」 振り下ろされた右腕が魔物の背中にあるコアを砕く。 赤黒く光る物質に亀裂が走り、激しく飛び散った。 「グアアアァァァ!!!」 魔物の断末魔が響き、その場に体が倒れ込む。 魔物の倒れた場所は赤い水溜まりのように変化し、魔物の体が徐々に沈んで行った。 やがて、水溜まりは魔物を呑み込んだ後、地面に染み込むように消えていく。 「討伐完了…」 男の身体が再び赤黒い帯に包まれたと思うと、その帯は身体から離れて消えた。 そこにはなんと人間の姿の男が戻っているではないか。 小さく溜め息をつき、両手をパンパン払うと、男はもと来た道を戻り始めた。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加