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――初夏のグランド。
夏の匂いが優しく香る。
空も赤みを帯び、サッカー部や野球部は懸命に練習を続けている。
バスケ部の俺は足首を痛めたため、早めに切り上げた。
実はそんなに痛くもなかったが、足を踏んだやつは(同じクラスだったが忘れた)俺に肩を貸した。
責任を持って付き添うと言っていたが、どうせサボるつもりだったのだろう。
積極的に話しかけてくる相手に、幾度か相槌を打ちながら玄関を出た。
友達らしきサッカー部員に声をかけられて断りきれなかったのか、俺を置いてコーンを物置に戻しにいった。
俺が大したケガでもないというのはあいつもわかっているだろう。
バスケ部員に見られる心配もなかったので、俺も手伝うことにした。
――今思えばこの時の行動がいけなかったのかもしれない――
物置には誰もいなく、俺は辺りを見回しながら覗き込んだ。
後ろから声がして振り向くと、もう遅かった。
――目が覚めると横になっていた。
強烈なめまいと共に吐き気が襲ってくる。
頭を揺さぶられているような感覚がして何も考えることができない。
状況を判断するため、ゆっくりと違和感のある箇所へと目だけで見下ろした。
・・・・鉄か・・?
金属に付着した紅い液体で何が起こったのかを全て悟った。
・・・左半身が鉄骨の下敷きになっていたんだ。
――痛い・・・痛い・・・
叫ぶどころか声を出すことさえもできない俺の頬には涙が伝っていた。
誰も来ない。
――辛い・・・誰か・・・来てくれ・・・
痛みと出血で意識が朦朧としてきた。
――俺はそのまま目を閉じた。
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