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――季節は春
新たな時の流れを運ぶ風がヒュウと吹いている。
朝なのか少し肌寒い、まだ冬の空気が完全には変わっていないのかもしれない。
「今日から入学なんだよね…。」
えへへ…なんだかまだ照れくさい。
なんて言ったって
「久しぶりに兄さんに会えるんだもん!」
――はっ!間違えた
「あのNMAに通えるんだもんね、頑張ったなぁ自分…」
NMA、正式名称NationalMagicAcademyは国内でも有数の名門魔法学校だ。
そしてなんとそこに自分が通えることになったのだが。
「なんで受かったのかなぁ?」
未だに信じられない。
兄ほど学力が優れているわけではないから、実際マグレだと思っている。
「とりあえず行かなきゃ…初日から遅刻はまずいっしょ。」
慌ただしく部屋を出て階段を駆け下りて玄関を目指す。
そして今まさに家を出ようとしたら、後ろから声をかけられた。
相変わらず若い頃と顔が変わらない童顔な母、サキ=クドウである。
「あらカイ?行くならお兄ちゃんにこれ渡して!忘れてったのよ。」
はぁ…またか。
母に渡されたのは茶色い小さな袋だった。
少し振ってみるとカサカサ音がする。
「了ー解!!じゃ行ってきます」
「あっあとこれ、はい」
「何?これ…」
そう、母に渡されたのは綺麗な水色の石のブレスレット。
あたしなんかには勿体ない代物というやつだ。
「持っていると良いことがあるわ。」
童顔な母が言うのなら(関係ない)何かしらの効果があるのだろう。
……ふむ、持っていこう
「あ…お兄ちゃん3―SAだからねーー!!?」
今更!?と言うことはせず、手だけ振り替えし学園までの道のりを急いだ。
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