1196人が本棚に入れています
本棚に追加
「くそっ…1時間も待ってたじゃんか」
と言って、ミノルは学ランの一番上のボタンを外して手で顔を仰いだ。
肌にあたるのは暑さすら感じる春の風。
「悪いな、気が変わったんだ」
「……カズヒコってさぁ…」
「何?」
「……なんでもない」
気が変わったのなら、変わった時点で連絡してほしいと切に願う。
ミノルの怒りはどこかへ飛ばされてしまったようだ。きっと運んだのは春風に違いない。
ミノルが更にかわいらしく思えて、カズヒコの頬がゆるむ。
「何ニヤニヤしてんだよ、てめー」
「お前って、まじでかわいいな」
「メガネが曇ってるぜ、不良クラス委員」
「後半は否定できないな。俺は今、体調が不良中なんだよ」
「どこがだっ!!」
「それに、委員だったのは3月までの話だ」
メガネを外して席の上に置く。
「クラス委員じゃなくても入学式サボるなよ」
根本的な点に気づいてミノルも笑っていた。
「入学式は新入生が主役だろ?俺は去年出た」
「普通毎年出るんだよっ」
ミノルがカズヒコに近づく。
すでに荒れていた息も整った。
最初のコメントを投稿しよう!