若葉の候

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「くそっ…1時間も待ってたじゃんか」 と言って、ミノルは学ランの一番上のボタンを外して手で顔を仰いだ。 肌にあたるのは暑さすら感じる春の風。 「悪いな、気が変わったんだ」 「……カズヒコってさぁ…」 「何?」 「……なんでもない」 気が変わったのなら、変わった時点で連絡してほしいと切に願う。 ミノルの怒りはどこかへ飛ばされてしまったようだ。きっと運んだのは春風に違いない。 ミノルが更にかわいらしく思えて、カズヒコの頬がゆるむ。 「何ニヤニヤしてんだよ、てめー」 「お前って、まじでかわいいな」 「メガネが曇ってるぜ、不良クラス委員」 「後半は否定できないな。俺は今、体調が不良中なんだよ」 「どこがだっ!!」 「それに、委員だったのは3月までの話だ」 メガネを外して席の上に置く。 「クラス委員じゃなくても入学式サボるなよ」 根本的な点に気づいてミノルも笑っていた。 「入学式は新入生が主役だろ?俺は去年出た」 「普通毎年出るんだよっ」 ミノルがカズヒコに近づく。 すでに荒れていた息も整った。
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