おしごと

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   朝ごはんを食べて、店の掃除をする。妻と二人で切り盛りしている理髪店だ。  硝子ドアを拭いていると、2階からバタバタと慌てた足音。 「遅刻遅刻~」  娘の美由紀(みゆき)だ。朝が弱く、いつも遅刻ギリギリで出掛けて行く。 「ご飯食べろよー」 「行ってきまーす!」  年頃の美由紀は、父親である自分とあまり会話をしてくれなくなった。娘は冷たいもんだよ。  リッキーはそんな親子の空気を取り繕う様に、大袈裟にしっぽを振っては僕を見上げるのだ。 「味方はお前だけだよ」 「お父さん、早く開店の準備してちょうだいよ」  まったく、のんびりしてばかりなんだから。と、ぶつくさ言いながら妻は洗濯物をとりこんでいる。  リッキーを撫でていた手を止めて、「close」と書いた札を「open」に裏返した。  
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