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prolog-ハジマリ-
冷たい雨が地面を叩く。
薄暗い路地裏の片隅。そこにかつて人だった『物』が大量に転がっていた。
切り裂かれた者、殴られた者、潰された者――絶命した理由こそ各々で違う様だが、それらは全てただの肉塊だ。当然、命無き『物』は動きはしない。
岡崎直哉は眉を寄せ、転がっている肉塊を不愉快そうに眺めた。
魔性に襲われた現場を見慣れた自分でさえ、思わず顔をしかめる程に血生臭い。すごい血の量だ。この場所で転がっている死者の数は、どれだけ軽く見積もっても最低50人はいるだろう。
「………っ…」
視界に、鉄の何かが見えた。
ここに転がっているのは不運にも魔性との戦いに巻き込まれた者だけだろうと思ったが、半分以上は鎌やら鉈やら武器を持っていた。どうやら無謀にも魔性に挑んだらしい。
血生臭いのも愉快ではないが、何より一般人が魔性に挑むなんて馬鹿げた行動が一番不愉快でならない。
相手は魔性。文字通り魔の性質を持つ生き物なのだ。何の力もないただの人間が敵う程、生易しい存在ではない。
というか、能力のない輩が魔性に抗う術を考える事すら時間の無駄にしかならない事だというのに。
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