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「正直私も困っているのだ。おまえには普通に元服させるつもりであったのに、秋篠院様がいやに乗り気でな、断れなかったのだ」
「なら正直に男である事を言えばよかったのでは?」
「……秋篠院様はな、お前を孫である東宮の妃に迎えたいという腹があるのだ」
「東宮妃!?」
つまり政治的策略と右大臣家安泰の為に一人息子を犠牲にしたのである。
世の貴族が娘に世継ぎを産ませ、外戚として権力を得、地位の足固めをするかのように………。
ニヤリと口を上げて黒い笑みを見せた父親に呆気にとられる
「私が女ではない事がバレれば安泰どころかお家断絶ではありませんかっ!」
「心配するでない、まだ入内はさせん。
妹の二の姫が裳着を迎えたら入れ替わらせるゆえ、二年辛抱して適当にあしらえばよい。
その後は元服させ右大臣家の跡取りに据えるつもりだ」
「そんなに上手く行くのでしょうか?」
「それにな、たとえ入内したとしても、東宮は男色家という噂のある人だ。
お前には手出しはしないだろうよ」
「…だっ男色家?
バレたら一番身の危険があるじゃないか…」
顔色を無くす葉の肩をバンバン叩くと、「わはははっ男だろう、細かい事は気にするな」と引導を渡しとっとと退室してしまった。
後に残された葉は呆然と立ち尽くすしかなかった………。
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