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目を開ければ、香を焚きしめたよい香りのする直衣(のうし・貴族の常服)が目に入る。
「どちらの姫かわかりませんが、とんだお転婆さんだね。
怪我はしていませんか?」
下敷きになっている青年に物腰柔らかく話し掛けられた。
「あっ…助けて頂きありがとうございます。あなた様こそお怪我はありませんでしたか?」
「ええ、私は何とも」
青年はクスリと笑うと葉を抱き起こした。
「実はね、始めから見ていたんです。女房を困らすお転婆が木の上にいる事を。面白そうな事をしていると思ったら、あなたが落ちてきたという訳です。
その大荷物は家出でも?」
見た目は品のいい好青年であるその青年が、意地の悪そうな笑顔を見せて問いてきた。
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