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「……ちょっとそこまで散歩しようと思っただけです」
「へぇ…そんな大荷物で?
私は退屈で仕方ないんですよ
あなたに仕える女房達に引き渡しても構わないんですが、何か深い事情があると見ました。
命の恩人にその理由を話す気はありませんか?」
…………………。
じりじりと追い詰められ、自分が落ちてしまった木に縫い取められた。
初対面の男が、明らかに貴族の娘と分かる少女にするべき振る舞いではなく、助けを呼ぶべきか迷うが、連れ戻されるのだけは勘弁してほしかったので叫ぶのは止めにした。
「なぜそんな事を?」
「それはこちらの台詞ですよ。あなたは大変興味深い…
私の審美眼は外れた事がなくてね、随分とかわいらしい顔をしているけれど、何故貴方は少女の格好をしているのです?
まさか…趣味とか?」
男は葉の顎をくいっと持ち上げると、いきなり手を服に滑らせ下肢を探った。
「なっ………」
いきなりの無礼に、頬を張るつもりで手を振り上げると手首を捕まれる。
「まあそう怒らないで下さい。確かめただけなのだから」
今まで一度も見破られた事はなかった。
自分の真の性別を知っているのは、あの時の僧と両親、幼なじみの雅鷹、そして葉付きの女房だけなのだ。
やばい……
裳着があんのに世間にばれたら、秋篠院様の耳に入ったら―――。
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