2785人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
都から少し離れた、奥まった場所にある邸に牛車をつけると中に案内される。
寝殿造りの見事な建物で、どこかの貴族の邸らしかった。
「ここはあなたの邸?」
「いや、友人のだ。
そういやまだ名前聞いてなかったよな?子猫ちゃん」
葉の前では取り繕うのを辞めたのか、品のいい好青年だった男は、ですます口調をやめていた。
育ちがいいのだろうか、品だけは平伏したくなる程高貴だったが……
「…葉です」
「では葉、秘密をばらされたくなければ何も言わずに黙って従うように。」
「…わかりました」
偉そうな態度にムッとくるが、黙って後ろについていくと部屋に通される。
通された部屋には女性がおり、そこには几帳も何もなく対面する形で腰を降ろす。
色の白い優美なその女性は、挨拶もそこそこに葉を抱き寄せると黄色い声をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!