……秋の夜長は誘惑の時!?

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舞や歌でその場の人気を独り占めした葉は、今宵の主役となっていた。 舞の相手をした雅鷹も共に囲まれ、酔い潰されてしまう。 葉自身もたしなみ程度にしか口にしたことのない酒を幾度も勧められ、すでに足がふらつき始めていた。 このまま邸にもどって誰かに見つかれば、確実に大目玉をくらいそうである。 「はぁ…子供にこんなに酒勧めるって…なんて人達なんだろうな」 葉は酒の酔いを冷ます為、廊下に出る。 宴の場に人が集中しているせいか、少し外れた廊下には人の気配もなく怖い位にひっそりとしていた。 静かな空間に、どこからともなく声が聞こえてきた 「…朧月夜に似るものぞなき……」 それは、巷でベストセラーとなっていた書物、源氏物語の中で朧月夜の君が口ずさんだ歌だった。 こちらへ歩いてきたのは、近衛府の出世頭で、プレイボーイで名を馳せている近衛中将だった。 「今宵はとくに月が美しいと思ったら、嬉しい人に出会えたな」 と袖を捕まれてしまう。
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