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「…中将、私は朧月夜の君ではありませんし私は男ですが…」
ここにも三人目の変態がいたよと思いながらやんわりと断ってみるが、中将は引く気はないらしい。
「そうつれない事を言わないで。
月に魅入られたとでも思ってくれればいい」
そういえば近衛中将といえば家に求婚の文を寄越す男達の筆頭じゃないか
なんて女たらしの奴なんだ!今は男だけどと一人頭の中で文句を言っていると、強引に腰を抱いて部屋に連れ込まれそうになる
酒の酔いもあって上手く抵抗出来ずにいると
「私の可愛い人に何をしているんです?」
と声をかけられた
柱に寄り掛かりながらこちらを眺めているのは一雅だった。
来るのが遅いよ!と思いつつ助かったとホッとする
「……おや残念、こんなに可愛い人に恋人がいない訳はありませんね」
さして残念そうでもないそぶりであっさりと引き下がる中将に、さっきの強引さはどこへ?と思うが取りあえずは危険は去ったらしい。
中将の姿が見えなくなるのを確認すると、一雅は怖い顔で葉の腕を捕んだ。
「全く油断も隙もないなお前は…
こんな所で口説かれてもう少しで貞操の危機だったじゃないか」
好きで口説かれた訳じゃないのに説教をする一雅に不愉快な気持ちを覚える
「いつまで腕を掴んでいるんです!離して
何で私が怒られなければならないんです?
酔いも覚めた事だし帰ります」
伸ばされた手を振り払い、回れ右をすると逃げるように歩き出した。
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