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「少し早めに二の姫の裳着を済ませ、葉を元服させようかと思います」
右大臣家より東宮妃をという気持ちは変わらなかった。
だだ成人させるには二の姫は幼なすぎ、もうしばらく葉に助けてもらう腹のあった右大臣だったがこれはそうも言ってはいられない事態になりつつあった。
「そして二の姫を東宮妃として内裏に上げるのか?」
「はい、院にも顔が立ちますしそれが一番かと」
「光頼(みつより・右大臣の名前)、私は葉を愛おしく思っている。
お前にはすまないが、出来る事なら側に置きたいと思っている。妃をめとるつもりはない」
東宮の言葉に心が揺れる。息子が道ならぬ恋にとらわれる事になるという事は、前回の茨木事件のときに安倍清明により聞いていた
恋は自由である。
若い二人の情熱を邪魔する程不粋ではない風流人だという自負もある。
右大臣という立場がなければ応援してやりたいとすら思うのだが…
(葉は一雅殿の正体をまだ知らない。傷の浅いうちに二人を離し、右大臣家の跡取りとして生きてもらわなければならん
そして宮家の存続の為、ひいてはお国の為に一雅様には妃をめとってもらわねばならん)
「……父としては有り難く存じますが
恐れ多くも東宮様、あえて右大臣として意見させて頂きます。
あなた様は世継ぎを作り宮家を存続させるという御役目がございます。兄であらせられる帝に御子がいらっしゃらない今、あなた様が次代の主上なのです。
葉との事はひと時の戯れ
妃を迎えるべきだと進言致します。」
「……光頼」
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