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馬でかけながら弓をひいたのはずっと心に留まって揺らいでいた人だった。
血まみれの顔を抑えながら木から転げ落ちてきた茨木に、もはや抵抗する力は残ってはいなかった。
「綱…お前に手柄をくれてやろう
私の首を切れ」
「…茨木」
「この国に我の生きる道はない。共に歩く仲間もいない。
弓をひいた人間…
お前になら出来るであろう
あの渡来人らを国へ帰してやってくれ
さすれば…我は大人しく滅されてやろうぞ」
よくよく周りを見渡せば、葉を除いた兵達は一雅に向かって頭を下げ平伏している。
「…一雅?あなたはいったい…誰なんだ?」
「詳しい話は後だ。
綱、鬼の首を」
「御意」
綱は一雅に一礼すると名刀“髭切”を振り上げ茨木の首に振り下ろした―――
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