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美しい花
摘んでしまわなければ
私のものにならない
摘んでも
根が足となり逃げてしまわぬよう
押し花にしようか
ドライフラワーにしようか
里江は美しい女性だった。
そこら辺にいるネバついた汚い着飾ったオンナとは違う。
清楚で儚げで、私にとっては高嶺の花だった。
里江は明るく人懐っこく振る舞うものだから、男性の人気は底知れず。
このままだと他の男に摘まれてしまうので、私が早く摘んでしまわなければならないのである。
里江との出会いは大学入学の日で、校舎内を迷っている私に話しかけてきたのが始まりだった。
私は、こと"恋愛"というものに疎く、今まで芽生えた事のない感情に、春風に舞う花びらになったような気になり、心が高揚した。
だが、話しかけてきた里江にとって、話しかけるという行為は日常において特別な意味を成しておらず、迷っている青年に話しかける事もまた、当たり前の事だった。
だがとにかく、この事がきっかけで私は里江との近付きを果たした。
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