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人々は、夢に向かって走り出したあいつを妬みだした。
「あいつばかり幸運に恵まれている」と。
自分に持っていないものを持っているあいつが羨ましくて仕方がないらしい。
そして、口々に
「あいつの船なんか沈んでしまえばいいんだ」
「高波にのまれてしまえばいいんだ」
とのろいの言葉を吐き出しだした。
「……ちょっとまてよ」
僕はそんな状況に耐えられなくなった。
「さんざん馬鹿にしてただろう。いまさら何を言っているんだ」
黙る人々。
「たやすく人の覚悟の前に立ちはだかりやがって」
ばつが悪そうにつま先で地面をかきはじめる。
夢の終わりは やつがこぶしを下げたときだけで十分だ。
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