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「流石は大佐。素晴らしい剣技を拝見させていただきました」
その言葉もそうだった。
いつだって男の言葉と笑みには、苛立たせられる何かがあった。
「てめぇ……何の用だよ?」
ラインムートは低く唸るようにして声を絞り出す。
その男……カストルはそんなラインムートに対しても一切調子を変えることなく笑みを深くして見せた。
「いえ何、ちょっと大佐の訓練の見学させていただこうと思いまして。
有名ですよ? 大佐の訓練をやり遂げた兵士は、誰でも勲章級の仕事をこなすようになる。
此処は一流兵士への登竜門……とね」
おどけても見えるカストルの仕草に、ラインムートは眉をひそめるだけで何も答えようとはしない。
分かっていた。この男がそんな理由でわざわざ自分の仕事を抜け出すことはあり得ない。と。
カストルは何も反応しないラインムートを見て、ふっと嘆息交じりに肩を竦める。
そして、その笑みを深く、黒くしながら言葉を続けた。
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