4871人が本棚に入れています
本棚に追加
「セイファート、僕だよ」
そう声を掛けながら出てきたのは、蒼い髪の青年だった。
刀身が黒く塗られた短剣を右手に、疲労の濃い笑みを浮かべている。
彼はセイファートと同じ黒で統一された、そしてこれも同じく損傷のひどい戦闘服を身に纏っていた。
「ウォルフ、脅かすなよ。
もう少しで斬りかかるところだったぞ」
セイファートは見知った顔に安堵し、吐息を漏らしながら柄を握った手を解く。
そして再び腰を降ろすと少し横にずれ、ウォルフが座るスペースを作った。
幸いなことに、この大きな岩は大人二人が隠れるのにも申し分ない。
下草に半身を隠すようにして立っているウォルフは、少し辺りを警戒した後、セイファートの隣へ腰を落ち着かせる。
「ごめんごめん。
そっちはどんな感じ?
だいぶやられたみたいだけど」
最初のコメントを投稿しよう!