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「…はぁ…」
着替えを済ませ、その姿を鏡で見るとため息しかでてこない。着ている服はピタTにカジュアルなミニスカ…
只でさえメリハリのない体のラインが強調されて余計に幼児体型が際立つ。
でもオレが女だと知っているのはごく僅か。高校に至っては担任と理事長、校長のみしか知らない。
他は皆男だと信じきっている。
そもそもなんでこんなことになっているかといえば、結婚したまさにその日、今から約二年前の匡愛の一言からだ。。
『やはり夫婦は一緒にいてこそ、ですよね』
何を考えて言ったのか匡愛放ったこの一言で、無理矢理匡愛のお父さんが理事長を務める高校に転校させられ、更には『結婚していることをカモフラージュするため』として性別すら偽ったまま高校生活を送ることになったのだ。
「着替えて参りました…」
リビングに再び戻り声をかけると、匡愛はこちらに視線を向けた。
しばらくオレを見た後、軽く鼻で笑い、さも残念そうに言う。
「……いつみても素晴らしい程まっすぐなラインですねぇ」
「…っ‼‼‼お前いってはならんことを‼分かってるよ‼自分が幼児体型なことくらい‼」
「おや、誰も幼児体型だなんて言っていませんが?純粋に綺麗なラインだと褒めただけですよ?」
「この屁理屈屋がぁ‼今のは確実にバカにした言い方だった‼」
「とんだ被害妄想ですねぇ…困ったものです」
毎度のことながら、この意地の悪さにはうっすらと殺意が芽生える。
………ホントに一回死ねばいいのに。
「――ところで」
「へ⁉」
「なんですか?そんな変な声だして」
「いっいや、なんでもない‼」
考えていたことがバレたのかと内心ビクビクしながら冷静を装う。
「ロクでもない事を考えていた気もしますが…まぁいいでしょう。それより美佳、確か来週誕生日でしたよね?」
「え⁉あ、うん‼来週で18歳になるよ」
「美佳の誕生日と結婚して三年目の記念日あることですし旅行にでも行こうと思うのですが」
「え⁉」
その思いがけない提案に、声が上擦ってしまう。
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