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6限目から気になってた嫌な予感が的中しちゃって、ひとつため息をついた。
予報じゃくもりって言ってたのに……傘持ってきてないから、どうやって帰ればいいんだろ。
かなりシトシト降ってて、近くのコンビニまで走るのも一苦労だよ。
そんな風に靴箱のところで立ち尽くしていると、クラスメイトの相沢涼が傘をぶらんぶらん振りながら私の隣に並んだ。
「何? お前傘忘れたのか? ダセー」
涼の傘の柄には『鈴木』と、ご丁寧に書いてある。
「相沢くん、いつから鈴木になったの?」
「げ。まぁいいじゃんか、これで濡れずに帰れるわけだし」
人の傘パクったな、こいつ……。
「とりあえず、同じ方向だから、一緒入ってくか?」
「やったね! さんきゅ」
ラッキー!! これでコンビニまで濡れなくてすむや。涼もたまには気が利くとこあるんじゃん。
涼とはバカ言い合うような仲で、知り合ってもう1年近く経つ。高1の入学式早々遅刻してきたのがこの男になる。
同じクラスでたまたま席も近くて、通学路も途中まで同じだから、いつの間にかよく喋る男友達になってた。
「もうちょっと中入れば? 肩濡れるぞ」
「なんか気持ち悪いくらい優しいね」
私が呆れた声を出すと、涼は憤慨したような視線をよこしてきた。
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