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ドキドキ‥バクバク‥ドキドキ‥バクバク………………ダメだぁ!
やっぱり私には出来ない~~ぃ!
唇に触れる寸でのところで、和広から離れた里香子は、バクバクが治まらない胸を両手で押さえて、その場にぺたんとしゃがみこんだ。
私、今、何しようとしてた……?
和広からは変わらず、規則正しい寝息が聞こえる。
自分がしようとしてた事が急に恥ずかしくなってきて、里香子は逃げるようにその場を後にした。
気分転換に海でも歩いてこよう。
里香子の足音が遠ざかったのを確認して、和広はやおら目を開けた。
今のは、一体……。
ただの従妹で、妹みたいなあいつに、なんで俺はドキドキしてるんだろう。
実は、全然眠ってなんかいなかった。
だから、里香子の気配がどんどん近づいてきて、彼女のシャンプーの香りが鼻先をくすぐって初めて様子が違う事に気付いた。
まさか、この年になって、しかも里香子に対して、自分がドキドキするなんて夢にも思ってなかった。
「どんな顔して会えばいいんだよ‥‥」
里香子がいつも俺を見る目が、普通と違う事に大方気付いていた。
でも、まさかここまでではないと思ってた。
遠くに目をやると、砂浜を一人で黙々と歩いてる里香子が目に映る。
時計は午後1時半を指している。少し早いけど、そろそろ帰るか?
荷物を抱えて、里香子の方へ歩いて行くと、彼女はすぐ俺に気付いて、もう帰るんだね、とはにかんで笑った。
この表情も、初めて見た気がする……。
途端に俺の鼓動がせわしなくなっていく。
「帰ろうか」
ぶっきらぼうにそう言い、歩きだした俺の耳に、潮騒がいつまでも響いてきた。
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