春の雨とさくらんぼ

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 車に乗り込むと、和広は邪魔しちゃったな、と苦笑した。 「気にしないで! ただのクラスメイトだし、傘に入れてもらってただけ!」 「ムキになっちゃって! 若いっていいな~」  和広はそう言って、楽しそうに笑った。  かずにぃだって、十分若いのに……。  かずにぃは、私より10歳年上の従兄だ。  “和広兄ちゃん”と呼ぶのが面倒臭くなって、今ではかずにぃと呼んでいる。 「でも、なんでかずにぃがここに? さっき一瞬びっくりしちゃったよ」 「あぁ、ちょうど里香子ん家に行くとこだったんだ。保険の事で叔母さんに話があったから」 「そっかぁ」  興味なさげに返事してみたけど、私はそれがすごく嬉しくて、胸がはち切れちゃうかと、真剣に思ってしまった。  かずにぃは保険の仕事をしてる。正確に言えば、代理店で、保険会社と家庭を橋渡ししてる人。  だから時々、こんな風に家にやって来たりするんだ。 「たまたま高校の前通ってたら、里香子が男と相合傘して出てくるんだもん! マジおもしろかった」 「だからそんなんじゃないってば!」  ニヤッと笑う和広の横顔を見ながら、私の頭の中は、ヘコんだり、ムッとしたり……。  かずにぃにからかわれるってかなりヘビーだなぁ……。  他の人から言われるのは気にならないのに……。 「本当にアイツとつきあってないの?」 「ムッ! しつこいなー!! 私は誰ともつきあってません!!」  思わず、あからさまに嫌悪感を含ませた言い方になってしまって、自分でも余計に自分が嫌に感じた。
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