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名前:ジム・ブラッキン
年齢:21歳
家族:母と妹
住居:NY
職業:ヴァイオリニスト
クラシック音楽に興味の無い人からすれば、僕のプロフィールって大体こんなものだろうと思うが、今、目の前に山と積まれているコンサートのプログラムによると、ジム・ブラッキンには書いても書いても書ききれないほどの経歴があるようだ。
そして、左となりのページには、セルジュ・リヒノフスキー、今回の僕の共演者となるヴァイオリニストの経歴が書かれているけれど、これもまた18歳のくせに、僕よりも長いプロフィールで、このまま30歳、40歳ってなったらどれだけ長くなるんだ?と、要らぬ心配をしてしまう程だ。
明日から三夜連続で、リヒノフスキーとバッハのダブルコンチェルトを演奏する。
神童リヒノフスキーと僕の共演は話題性があったのかチケットは1時間で完売、多くのスポンサーがついたおかげでプログラムは豪華な冊子になり、ソリストひとりにつき、一ページの紹介スペースが可能になったのだ。
今日はリハーサルという事でホールにやってきたけど、小憎たらしいリヒノフスキーとの共演は正直気が重く、リヒノフスキーが病気にならないかなんて不謹慎な事を願ったりもしていた。
しかし僕が廊下で、スタッフと立ち話をしている時に、元気な様子のリヒノフスキー母子を見かけてしまい、仕事中止の夢は消える。
とりあえず、母子に「こんにちは」と軽く挨拶をすると、母親の方は、引きつったような表情で僕に挨拶をし返した。
そして息子のリヒノフスキーは、その母親とは対照的に、「あ、ブラッキンさん。」と嬉しそうな声を出す。
なかなかカワイイところがあるじゃないか。
リヒノフスキーの母は相変わらず僕を嫌っているようだけど。
僕は「今日からしばらくよろしく」と笑顔で返す。
と思ったら、背後から「やあ、君達!」と大きな声がした。
指揮者のガルボが、大きな身体を揺らしながらやってきたのだ。
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