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急いで段の高い車へと乗り込んだ。
久しぶりに乗った助手席は少し埃っぽく、サイドボードには軽く水ぶきした後がうっすら線を作っていた。
その線を目で追うと同時に車は発車した。
勢いよくハンドルをひねり細い道を器用に走る。
いつもの見慣れた道順、お出掛けにテンションが上がり騒ぎ出す子供たち。
流れるCDも主人の加えタバコも、見えた景色も。
ほんの何ヵ月空いて本当は久しぶりだけど、これが家族の形でいつものお出掛けのスタイル。
だから、何も
本当に何もなかったんじゃないかと、何もかもが勘違いで思いすごしだと錯覚しそうになる安心感が顔を出し始めた。
あえて何も語らず、聞き慣れた音楽に聞き入ってるフリをして、横目で主人を見た。
加えタバコの煙に目を細め、ただ正面をみる主人。
この横顔はあの女も見てきたのだろうか…。
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