1.安眠妨害

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 制服は砂まみれのま ま、海斗は重い足取りで帰宅して行った。  小学校までは喧嘩には自信があり、海斗はヒーロー気分だった。  しかし、中学に入ると相手は集団化するようになる。  それで、とても一人ではかなわなくなってきたのが負ける原因の一つであろう。  帰宅した海斗は二階の自分の部屋にそそくさと上がって行くと、汚れた服を脱ぎ捨ててベッドにまるくなった。  海斗は負けたことをまだ気にしていた。 「海斗! ごはんよ。降りてきなさい」  一階から母の声が鳴り響いた。 「いらない!」  そう言うと海斗はそのまま眠ってしまった。  満月の夜、雲は無く、月明かりが静かな町を照らしている。 「……海斗……海斗、起きろー!」 (ん? なんだ?)  海斗が起きると、部屋の窓を叩く音と女性の声が聞こえる。 (えーっ…夜中に声? しかもここ二階だろ……まさか、幽霊!?)  恐る恐る窓を開ける と、そこにはホウキに乗り、黒いマントを纏った同年代位の少女と少年がいた。  少女は、大きな黒目をしているが欧米系の顔付きであり、栗色のショートヘアが満月に光り輝いた。 「やっほー! 魔法使い参上だぞ!」  少年は黒髪の丸い感じの髪型で、黒く四角いメガネをかけていて、反射でよく目が見えない。 「ちょっとアリス。いきなりそれはびっくりするから! あの、どうも。けっして怪しいものではありませんよ」  海斗はほっとした。 (はあー、なんだ夢か。めんどくさい、とりあえずベッドに戻ろう) 「あ、そう。悪いけど今日は魔法使いの夢を見たい気分じゃないので、じゃ」  窓を閉め、海斗はベッドに戻って行った。
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