生きる

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子孫繁栄の礎がセックスの濃淡論者ウヨウヨ時代の末期。 生命力がなく抱かれもしない女たちがこぞって陰部を酢で洗浄し合い、その殺菌作用と清らかなる妖艶さに溺れたアシッドシンドロームに酢がもてはやされたとき、 目が酷く虚で肌質も老け切ったじめじめした子どもらしくない子どもが苔がかったブロック塀を這うナメクジにわざわざゴージャスな霧噴き容器にたっぷり入った酢を変な映画に出てくる、地球人が描くニセ宇宙人みたいな笑い方をしながら勝ち誇って噴きかけている光景が悩ましいのか、もがきながらだんだんと硬直変形してゆくナメクジの歯ごたえを想像しながら、すぐにそれを再現すべく、さして珍味でもないさきいかひと袋を万引きして、そこに愛用の酢を秘密基地から持ち帰り、ドポドポに浸し食らう。   脈打つ生命の荘厳なリズムが、アンバランスで不整脈チックな刻みをする落ち着きのなさがなんとも心地がよい。生きているとゆうことに安心しきったあまりに心停止や脳死を事前察知できるほど殺気だつことには辿りつけないでいた。シンプルリビング。これは不条理というより酢醤油をコップ一杯飲み干せますか? の問い掛けに即答できないくらいバカげているのにお気づきか。
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