かごめ

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「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?」 夕暮れ色に染まった教室で徠空は寂しげな歌を聞いた。 それは幼い頃によく歌った遊び歌だ。 その声の主は見なくてもわかる。 麻沼 叶。 幼馴染兼大親友だ。 「懐かしいね。」 後ろから声を掛けると、叶は驚いて振り向いた。 「らいちゃん!びっくりした。急に後ろから来るんだもん。」 「ごめんごめん。 でも、ホント懐かしい。」 「かごめ?」 「うん。よくやったよね。」 「二人だけでね。」 二人は幼かった頃を思い出し、小さく笑った。  叶の両親はそれぞれ仕事で忙しく、幼い叶は両親の共通の友人でもある徠空の母に預けられていた。 一方徠空の父親は各地を飛び回る写真家で、家にいることはほとんどない。 母親は小説家で、一度仕事が入ると部屋にこもったきり出てこなかった。 そんなわけで、今と同じように夕暮れに染まった部屋に、徠空と叶は二人きりでいることが多かった。  しゃがみ込んで両手で目隠しをする徠空。 その周りを叶が回る。 「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?」 「叶ちゃん!」 「あたり!」 正解するのが当たり前な遊びを延々と繰り返す。 今思えば何が楽しいのかわからないが、幼い二人は飽きもせず、はしゃいでいた。
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