かごめ

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 過去の思い出は二人にとって、大切な宝物だった。 「でもね、」 急にトーンの落ちた叶の声に徠空か訝しんだ。 「かごめの歌って、あんまりいい歌じゃないって説もたくさんあるんだって。」 「たとえば?」 「妊娠した女の人のお腹を籠に、赤ちゃんを鳥に例えてね。自分を階段から突き落として赤ちゃんを殺したのは誰だ?っていうのとか、」 「……。」 「一日中男の人の相手をさせられる遊女がいつここから抜け出せるんだろうって嘆いてる歌だ、とか、」 「…かなちゃん。もういいよ。それ以上言わないで。」 徠空は興味本位で聞いたことを後悔した。 自分達が何気なく歌ってきた遊び歌にそんな意味があるとは思っていなかったのだ。 そして、それを知らずに歌っていた自分が怖くなった。 「なんか、悲しいね……。」 「でしょう?」 朗らかな雰囲気から一転して暗くなった二人の耳に、下校時刻を告げる音楽が聞こえた。 その音に急かされるように二人は教室を後にした。  徠空と叶の家は隣同士だった。 その為、必然的に帰る方向同じになる。 二人は先程の話を思い出しながら、歌を歌っていた。 「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?」その声は哀愁を感じさせる。 「あのね、らいちゃん。」 「ん?」 叶は思い立ったように立ち止った。 それに一歩遅れて徠空も立ち止まった。 「さっきの話なんだけど…。あれはね、たくさんの仮説の中の一説にすぎないんだ。」 「うん。」 「だからね、私たちのかごめは…、」 「綺麗なままに、でしょ?」 顔をあげた叶の目に徠空の笑顔が映った。 徠空と叶は長い間一緒にいる。 二人の思いは同じだった。 叶は徠空の笑顔につられるように笑った。 「さ、早く帰ろう!」 差し出された徠空の手を取ると、二人は歩きだした。 「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?」 歌う声は明るく、たくさんの思い出が詰まっていた。 【END】
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