ドキドキのクレッシェンド

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口の形を上手く読み取るなんて出来なかったの。 ただ、微笑んでくれたことが嬉しかった。 ボードを持ち上げた瞬間見えた、ソールの英字のロゴが格好良くてドキッとした。 声が聞きたい。 名前だって知りたい。 駆け寄って想いを伝えなくちゃ後悔する? でも、足が少しも前に出なくって……。 視界に映る彼等は、ボードを脇に抱え歩き出す。 え、嘘……? 胸が震えた。 白い雪の上を、 一歩、一歩進む彼等は 真っ直ぐに進んで 私達の目の前に……。 「君、名前は?」 低いけれど柔らかく響く良い声。 見上げれば優しい瞳。 「……も、桃花です、 果物の……桃に… 草花の花でモモカ……」 「ほっぺが桃みたいだな……、可愛いね」 もう、ドキドキは大音量。 鈴音は涙ぐみそうになりながら笑ってた。 そんな鈴音を見つめる黒いウェアの彼は綺麗な声で言った。 「一緒に滑ろう」 恋のハーモニーが流れ出す。 切ないメロディ、 楽しいメロディ? それは、まだわかんないけど《私達の恋のメロディ》 クレッシェンドはきっと止まらない。 そんな予感がした。 きっと、空の上で雪の天使も優しく微笑んでるよね? きっと、きっと……。
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