桃花と鈴音のホワイトラブ?

5/8
前へ
/32ページ
次へ
リフトに乗れば、スピーカーから響く流行りの歌が気分を盛り上げた。 「今日はあったかいね、4度だって!」 「え!プラスなの?」 目を丸くする私に、ふっと白い溜め息をつきながら鈴音は言う。 「桃花は本当に天然だよね、そんな訳ないでしょ、真冬の山でプラスはあり得ないから……、マイナスよ、マ、イ、ナ、ス…!氷点下!」 ふたりで笑った後、鈴音は《恋の歌》を聞くと切なくなるなぁ…って言ったんだ。 寂しげな横顔は、あの涙を思い出すから私もちょっと悲しくなるよ。 半年前、鈴音は大好きだった彼にサヨナラを告げられた。 すれ違いが多かったとか、何だかんだ言っていたらしいけど、本当の理由なんてわからない。 わりとチャラチャラしてたアイツのことだから、他に女が出来たかもしれないと、怒りが爆発しそうになる私を鈴音が必死に止めた。 鈴音があんなに泣いた所を見たのは初めてだった。 私はずっと泣きじゃくる鈴音の肩を抱いていたっけ。 やっぱり忘れられないの? 「鈴音はさぁ…、美人でスタイル抜群! その上性格も良いから、すぐにいい人が現れるって、 あんなヤツのこと忘れる位良い男!」 あえて明るく言った。 「ありがとう……、私ね、新しい恋を探すんだ、やっぱり恋をしなくちゃね! 桃花にもいい人が現れると良いな、 桃花はすごくモテるのに付き合わないなんて勿体無いっていつも思う、 でも、流されないというか、きちんと自分がしたい恋を見極めようとしてるのかなぁ…なんてね! うん、とにかく絶対に桃花の《初カレ》は優しいヒトがいい! とっても優しくて包み込んでくれるようなヒト……」 鈴音の綺麗な横顔は大人びて見えた。 恋を夢見る私は、周りのみんなより色んな意味で随分遅い。 『これだ』と心ときめかせる恋をした事がないの。 ただ、そんなヒトに巡り会えなかっただけだもんと自分に言い聞かせてきた。 「あーあ、どこかにいい人いないかなぁ」 「恋がしたいね」 はぁーっと首を傾げて、ふたりの頭がごっつんこ。 「ぶつかったね」と微笑む鈴音のゴーグルに太陽が反射してキラリと映った。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加